ラジオ局の作る本気のラジオ — 公式ページにはそのように書いてあります。
2016年7月20日に国内のクラウドファンディングプラットフォーム「CAMPFIRE」を利用して製作が開始されました。紆余曲折、2度に渡る延期を経て無事に製品が完成。出資者へのリターン発送開始が2017年7月20日からということでちょうど1年をかけて世に出ることに。私の手元にも無事に届いたので色々見てみようと思います。
余談ですがCAMPFIREにはリターンが届いたかどうかを入力する場所があります。マイページの支援したプロジェクトの中に「到着確認」の項目があるので、届いた人はチェックしておいてあげると親切かもしれませんね。
付属品
付属品は5つ。充電用のmicroUSBケーブル・外部アンテナケーブル・インシュレーター・ステッカー・クイックセットアップガイド(兼保証書)。
クイックセットアップガイドは厚紙のパンフレットみたいな感じでとてもシンプル。底のふたの開け方が書いてないぐらいシンプル(そこは書いて)。
外観
背の高い水筒のような感じのHint本体。仕様によれば80 x 80 x 297 mm。
実物を見てみての感想は「思ってたより大きい」。30cmともなると結構な背の高さですが、重量も結構ある(1075g)ので割と安定感はある感じです。
色はブラックとフロストシルバー、クラウドファンディング出資者限定のシャンパンゴールドで3色。我が家にやって来たのはフロストシルバーです。
上下の隙間が空いている部分から音が出ます。2つの隙間に挟まれた真ん中部分はアルミ、残った上下の部分はプラスチック製。アルミの表面はMacBookのあのざらざらした感じと似ていて、プラスチックの部分は塗装。素材は違えど全体的な表面の質感は上手く統一されている感じ。
全体のデザインもあまりラジオっぽくなくて良いです。フットプリントが小さいので割とどこでも置けます。
ただし高級感溢れる感じではなくて、細かい部分なんかはチープな感じも見えるので、気になる人は少なからずいるかもしれません。この辺は本体カラーによっても印象が違うかも。
本体上部にはコントロール類がまとまっています。
本体上部にはダイヤルが2つ付いていて、上がボリューム、下がチューニングダイヤルになっています。このダイヤルは2つともクリック感がなく、好みが分かれそう。個人的にはカリカリとなる感じのダイヤルの方がコントロールしやすかったのかなと思っていますが、これはこれでアナログ感もあって良いのかもしれません。
ダイヤル下のLEDはFM受信時は緑色、Bluetooth接続時は青色に点灯します。AMには対応せず(ワイドFMに対応しています)、本体起動時は必ずFMで起動します。起動はかなり速く、1秒もかかりません。モード切替もとても高速。この辺はこだわって作ったようなので上手くいっているのでしょう。
上から見ると周波数やボリュームが見える7セグメントディスプレイ。ディスプレイの設置位置が結構深くて、ちゃんと真上から見ないと見えないのがちょっと使いにくい気もしますが、周波数をあまり変えずずっと同じ局を聞き続ける人が多いのもラジオ。そこまで大きな問題ではない気もします。ボリュームも感覚的に大きいか小さいかということなので、必ずしも数字は見えなくても良さそう。
ただ、ペアリングや充電のインジケーターランプがくっきりと見えないのはちょっと残念。本体の状態を示すランプなのでもう少しはっきり見えるようにして欲しかった気もします。
この上部の画面のあたり(本体上部の斜めになっている屋根みたいな部分全体)が電源ボタンになっていて、ここを押すことで電源のON・OFFしたり、FM・Bluetoothモードの切り替えをしたりします。ぐっと押し込む感じではなくてほんの数ミリだけカチッと動く感じのスイッチで、押す力はほとんど要りません。軽くポンと押す感じと言うんでしょうか。クリック感もちゃんとあります。
本体下部には各種コネクターなどがまとまっています。
正面にはHint(H!nt)の刻印。あんまり目立たない感じでシンプル。
左側面にはmicroUSB端子と音声出力端子(ステレオミニ)。microUSB端子は充電用(5V1Aが推奨みたい)、音声出力端子はイヤホンやヘッドホンなどを繋ぐことでFM・Bluetooth・音声入力端子(Line-in)からの出力を聞くことが出来ます。音声出力端子にイヤホンなどが繋がっている間は本体スピーカーがミュートされ、ボリュームコントロールは通常時と同様にダイヤルでを回すことで出来ます。
右側面にあるのはペアリングボタン。5秒長押しでBluetoothのペアリングモードに入ります。
背面にはふたが付いていて、これを外すと端子類が出てきます。
端子が2つとスイッチが1つ付いています。
右側の端子は音声入力端子(Line-in・ステレオミニジャック)。ここに外部から音声入力をすることで本体のスピーカーから出力することが出来ます。モードに関わらずこの端子に接続がされた時点で音声入力端子からの音声が優先されてスピーカーから出力されます。
左側の端子は外部アンテナを接続する端子です。付属のアンテナやテレビアンテナのケーブルを繋ぐことで受信感度を上げることが出来ます。
真ん中のスイッチはFMを受信するときに使用するアンテナの切り替えスイッチで、左に動かせば外部アンテナ、右に動かせば内部アンテナを使用します。
底面部にはバッテリーが入っていて、このバッテリーを利用して電源コードを繋がずに駆動することが出来ます。バッテリーでの駆動時間は約3時間、充電時間は約5時間とのこと。
またここを覆う形で件の開け方の分からないふたが付いてます。ふたを覆うように手で握って左に回してあげると開きます。ちょっと開け閉めがしづらいのが良くないですね。
ふたにはもともとゴム製の足が付いていますが、4カ所ネジ穴が付いていて付属のインシュレーターを付けることも出来ます。
音について
音に関しては好みがあるので一概には言えませんが、期待を大きく上回る出来でびっくりしました。
スピーカーユニットは3WAY(66mmユニットスピーカー、ツイーター、ウーファー)。ラジオを聞くことをメインで据えているので低音や高音は割と控えめな印象。音楽を聴く分だと楽曲のジャンルによってはちょっと物足りないかもしれませんが、ラジオを聞くという目的に関してはとてもよくチューニングがされているなと感じました。ラジオの音がとても聞きやすい。聞き疲れしない。
スピーカーは無指向性のものが使われており、その小さいフットプリントも相まって置く場所を選ばないというのも非常に良いです。どこに置いても同じように聞こえる、どこにいても同じように聞こえるというのはとても快適です。存在感がないわけじゃないんですけど生活の邪魔にならない感じがいいですね。
FMラジオを直接受信した場合も受信がしっかり出来れば非常に綺麗な音が出ます。Bluetooth接続時はホワイトノイズが乗っているような感じがするので、radikoで聞かずともFMで聞けばむしろそっちの方が綺麗に感じたりします。
Bluetoothに関してはBluetooth 4.2に対応。プロトコルはapt-xは非対応でA2DPとAVRCPに対応です。apt-xまで対応していればそれはそれでよかったですが、これに関してはA2DPで十分でしょう。
ボリュームは相当出ます。0から100までの間でコントロール出来ますが、100を普段の生活で使うことはないでしょう。50ぐらいまでで普通は事足りそうです。出せる分には困らないのでこれはこれで良いと思います。
音がいい、というよりもとても聞きやすい、といった感じでしょうか。音ももちろんいいんですけどね。ながら聞きには適していると思います。だからこそラジオと相性がいいんだとも思いますが。
FMラジオとしてのHint
少なくとも現行の初期ロットのHintでは最大の長所にして最大の欠点となってしまっているこの部分。
そもそも内蔵アンテナがほとんど使い物になりません。これは結構致命的。最初不良品かな?とかほんとにアンテナ入ってるのかな?とか思ったぐらい使えません。一応ベランダに出るとかろうじてラジオの音がノイズの中に聞こえるぐらい。付属の外部アンテナを付ければ割と普通に聞こえますが、内蔵アンテナはあってないようなものになっています。
外部アンテナの端子を付けるということは割とプロジェクトの最初の頃から決まっていましたが、付属品として外部アンテナを付けるという話があったのはプロジェクトの最後の方でしたから、「Hintの本体が出来たはいいが内蔵アンテナ死んでるからこりゃ外部アンテナ付けないとまずいんじゃないか?」とかいう会議があって突貫で作って付けたんじゃないのと邪推してしまうほど。
まあ出資者にはその辺のリスクもあると思うので個人的には別に構わないんですが、9月には一般発売するそうなのでそれまでには何とかしてあげて欲しい。ほんとに。切実に。
ではFMラジオとしては終わっているのかというとそうではなく、テレビアンテナなどの外部アンテナを繋げる環境であれば非常に優秀で、とても綺麗に鳴ります。プロジェクトの初期段階から良いチップがあって・・・というような話が出ていたような気がするので、その辺はしっかり性能が発揮出来ているようです。我が家ではテレビアンテナを引っ張って繋いでいます。完全に外部アンテナ端子に救われたHintって感じ。
せっかく置く場所を限定しない素敵なスピーカーを載せて、電源がないところでも動くようにバッテリー駆動まで出来るようにしているのにもかかわらず、こんな形で置く場所が限られてしまうのも非常にもったいない。あとやっぱり何より「ラジオ」として売り出すアンテナ内蔵ラジオがラジオの電波が全然拾えないというのは非常に致命的なので、ほんとに一般発売までにはちゃんと直して欲しい。というか直して。
BLEビーコン
BLEビーコンに関してはまだデフォルトで入っていたビーコンしか拾っていないのであまり詳しいことは言えませんが、BLEビーコンの技術(Eddystone及びPhysical Web)とToneconnectの技術を利用した情報送信機能といった所でしょうか。
Toneconnectは5、6年ほど前に開発された技術。DTMF音(いわゆる電話のボタンを押したときの「ぴぽぱ」音)を利用して情報をやりとりしようというもので、実際に音を鳴らして情報をやりとりするので一度に複数の端末で、かつ、放送などを通じて発音された音にも反応出来るということで、かなり伝達性・拡散性は高い感じ。
これらの技術を利用し、URLをDTMF音に変換したものをラジオ放送に載せることで、それを受け取ったHintがDTMF音を解釈して自動的に近くのスマートフォンなどにプッシュ通知するといったことが出来るようになっているようです。
主にURLを扱うようなので、例えばラジオのゲストのアーティスト情報がまとまっているページをDTMF音でリスナーにプッシュするというような用途を想定しているようですね。
実際にみんな使えるようになれば情報送信が一斉に出来るという意味で便利そうではありますが、どうなるかはこれからですね。ちょっと物は違いますがなんだかNHKの緊急警報放送(ピロロロロロってやつ)に似てる感じもしますね。
簡単ではありますが事前にChromeの設定が必要なので、ちょっと普通の人にはハードルが高そうでもあります。
ざっくりと設定をまとめると
・Androidの場合
BluetoothをON、位置情報をON、Chromeの設定からプライバシー→フィジカルウェブをオン
・iOSの場合
Chromeをインストール、BluetoothをON、iOSのウィジェット(ホーム画面の一番左)の一番下にある編集からChromeを追加
といった感じのようです。どちらの場合もBluetoothのONとChromeが位置情報を使用することに許可が必要です(Physical Webの仕様のようです)。
音は良いけどラジオが拾えないラジオ
クラウドファンディングを利用して製作されたHint。実際の物が届かないプロジェクトもある中、とりあえず実物が来たのでほっとはしています。
もともと量産化・市販化を目指していたプロジェクトでもあるので、プロダクト自体の出来は所々悪い部分もありながらそこそこよく出来ている感じです。
ただ現行のままでお店に置いてあって買うか、と言われるとすっとうなずけない感じでもあります。プラスチックの部分の作りが何となく甘かったり、裏ぶたの開け閉めがしづらかったり、モードを表すLEDの部分がよく見ると基板丸見え(透明なケースの中には入っているので丸裸ではない)だったり。音に関してはお店では実際に体験することが難しいので、外観的な部分がある程度良くないと市販するのは大変なのかなと感じたりもします。
あと内蔵アンテナに関してはやはり改善すべきだと思います。単体で拾えないのはかなり致命的だし、「これのどこが本気のラジオなの?」って言われても仕方ないと思います。市販後のクレームの嵐が来ても擁護出来ない。
無指向性スピーカーによる音の気持ちよさ、聞き疲れしないラジオ向けの音作り、しっかり受信出来ているときのFMラジオの音の良さがあるだけに、その辺は非常に残念なので直して欲しいな。
私個人としては割と満足しています。部屋にいつもいる雰囲気としてのラジオデバイスとして、何となく部屋とかお店とかでラジオを流しているという使い方にはとても良いように感じています。現段階では万人にお勧めとは言えませんが、良い部分も悪い部分も含めて面白い良いガジェットに触れられたなと思っています。
もっと色んな部分を強化・改善してHint 2。さすがにすぐには出ないか。
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